わたしの小さい頃の夢は大好きな人と結婚して、その甘くてまあるい空間のなかでいつまでも幸せに暮らし続けることだった。
そんな綿菓子みたいな夢を、わたしは8年前に頬張った。わたしと恋人の荷物を乗せた小さなレンタカーには、たくさんの愛が詰まっていて、わたしはそのふわふわとした甘い空気にしがみつき、ただただ漂っていた。わたしはこの8年間をいろいろな意味でそんな甘い気持ちで過ごしてきたのかもしれない。
8年後のわたしは、甘い甘い空想的な幸せが長続きしないことを知っている。甘くてふわふわとしたあの気持ちを忘れた訳では決してない。だけどわたしたち人間。頭のなかが幸せな状態のまま生活し続けられないことは極々当たり前の現象らしい。恋人が共有してくれたオーディオブックにそんなような一節があった。はじめて聴いた時こそわたしは正直号泣したけれど、現実を受け入れられたわたしは前よりちょっぴり強くなった。
わたしは恋人の専属メイドとして一生を真っ当することを、最近あらためて誓った。恋人として寄り添うとはどういうことか、問い正しては間違えて、また問いただしてを繰り返している。
仕事をして家事をして恋人に全力で寄り添う。これだけでも日々のチェックリストの項目は3つ。キャパシティの狭いわたしは脇目も振っちゃいられないけど、ふとした瞬間や振り返った時に幸せや充足を感じられたならば、感じてもらえたならば、それはきっと長年暮らす恋人同士としては上々で、パートナーという観点からみた場合にも最高だろう。
わたしは恋人専属メイド。居ても立っても居られない。